A critcial townhouse-台南劉邸を例として

打開連合 劉國滄K.C.Liu 2024/6

翻訳 謝宗哲Sotetsu Sha

原屋建設年:1951年、改築年:2014-2016年

土地面積:70㎡、建築面積:97㎡

工事費用:300万NTドル

ジャン=ポール・リクール(Jean Paul Gustave Ricœur)が『歴史と真実』の中で示したように、普遍化(universalization)の現象は人類が近代化に向けて進む大きな進展であると同時に、言葉では言い表せない破壊をもたらします。グローバルな趨勢の中で、現代建築は依然として積極的な抵抗をすることができるのでしょうか?台湾建築界の試みは消えていません。私たちは地域「民家」の旧宅を地域の知恵の基盤として、臨界建造を精神のコアとし、現代生活のニーズと現代建築の知識、各地の気候に問いかけ、現代地域住宅の可能性を探ろうとしています。これは1996年にケネス・フランプトン(Kenneth Frampton)が批判的地域主義の意義を補足した際の意味と共通するところがあります。それは文化の間隙(cultural interstices)の中で成長する建築が、グローバル文明の衝撃(the optimizing thrust)に対抗しようとするものです。

一.概述

2.1.1.旧城郊外:本件は台湾台南市の旧集落五条港と安平港の間に位置し、これは百年前に都市の外縁地帯でした。この地域の経済状況は中の下程度で、住居密度が高く、小規模な連棟住宅が多くあります。元の建物は築73年(1951年新築、1963年増築)の旧宅で、2014年の改造時には既に1年以上放置されていました。日本式の屋根構造と台湾閩南式の強化レンガ造りの街屋で、初期の鉄筋コンクリート構造が混在しており、2階建て一部3階建て、建物幅約4m、長さ17.5mで、面積約100㎡です。

2.1.2.改造の原則:打開連合は「最高の価値」のために「最小の建造」を行うことを前提として、この案件に以下の条件を予め設定しました。1.既存構造を最大限に保存する。2.新旧構造の識別が容易であること。3.元の街屋の間取りに従う。4.快適な光、音、熱の住居。5.日常感の中で異常(Uncanny)を創造する。

二.臨界的な間取りの創造

2.2.1.元の間取り:平面は南向きで北側に位置し、この時期の多くの連棟街屋と同様、狭い室内通路と階段で7つの部屋を繋いでいます。1階の前方にはリビング/ダイニングルームがあり、後方にはキッチン/トイレ/浴室の複合空間があります。環境は狭く暗いですが、南向きの小路に面した部屋は日当たりが良好です。垂直の間取りは前、中、後の3段に分かれており、前段は2階建て二重屋根、中段は3階建て二重屋根、後段は2階建ての単屋根です。改造の主要手法は以下の通りです。

2.2.2.間取りを反転させた水平構造:元の長い隔間壁を保存して大空間の中の細長い箱を形成

元の1、2階の西側の狭長な室内通路をサービス空間に改造し、トイレや収納室などの機能を持たせました。即ち、流通を封じ、閉ざされた空間に変えました。元の1、2階の部屋の間仕切壁をすべて取り払い、閉ざされた部屋を開放的な空間にして光を取り入れます。即ち、閉鎖空間を流通する空間に変えたのです。

2.2.3.3フロアを見通せる垂直構造:最大範囲の床板を保存しつつ、建物の3フロアすべてを視認できるようにする

仰角視線を慎重に検討し、建物2階の前後端に最小の切除範囲で2つの天井を切り出します。これにより、前後部の光の室内照射面積を拡大し、室内の連続した通風路を創り出すことができます。その一方で視線が1階から2階を通り抜け、3階の旧立面も見ることができるようになりました。

三.臨界的な内外の創造:元の建築の外壁/屋根と新しい改造の間に、中間層を創造する。

2.3.1.二重屋根:既存のセメント瓦屋根の外側に新たに鋼構造の屋根を設置し、遮熱と採光のできる二重屋根を形成しました。また、新設屋根の勾配を調整することで、効果的に雨水を排水する屋根面が形成されています。

2.3.2.二重外壁:既存の外壁を保留し、内側にアルミ製の窓とドアの間仕切りを設置し、建物の前後に屋外と室内の間の中間空間を作り出しました。これにより光を効果的に取り入れ、騒音を遮断し、遮熱層を形成しています。

四.魔術的リアリズムの住宅:日常的かつ異常な生活空間

2.4.1現実からの出発:上述の防水、遮音、採光に基づく快適な住環境の創造に加え、この住宅は魔術的リアリズム的な生活体験を形作ります:

1.間取りの臨界:一見狭い街屋に見えますが、奥に広がるレイヤー状のリビングとダイニングが見えます。流通していた通路が閉ざされたサービス空間となり、閉ざされていた部屋が開かれたリビングルームとなっています。元の間仕切りの痕跡を残しながらも、新しい間取りの中に旧貌が見えるようにしています。

2.内外の臨界:前後の中間空間の遮音効果により、街頭が騒々しくても、室内に入ると静かです。また、中間空間に植栽された緑や、1、2階の通路にある既存の木製窓、3階から見える古い瓦屋根、2階のリビングルームの大面積採光により、室内にいながら屋外にいるような感覚が生まれ、室内外の曖昧さが生まれています。

3.時間の臨界:3つの時期の構造があらわになっているため、歴史と現代が並存している感覚と、屋外の喧騒と室内の静けさの対比により、時間の流れに奇妙な感覚を引き起こしています。

2.4.2Critical condition危険な状況:ギリシャ神話で、ダイダロスは息子イカロスに注意を促しました。「低く飛びすぎると、海の霧で翼が湿り飛行が妨げられる。高く飛びすぎると、強い日差しで翼が溶ける。」この状況は打開連合の設計探求とよく似ています。

デザインは研究です。学内での創作だけではなく、現実の設計作業もこのように見なされるべきです。私たちが「臨界」の「鍵となる建造」を慎重に評価しているように、このプロセスは危険なものです。私たちも皆さんと同じように研究とデザインを続け、最終的には向こう岸で再会できることを期待しています。

臨界について: